新型車が出れば、デザインを見て「かっこいい」と言う。装備を比べて「こっちがお買い得」と言う。私たちカミタケモータースは、毎日そうやってお客様に車をご案内しています。でも、ふと立ち止まって考えました。
その1台が、どこで、誰の手で、どれだけの時間をかけて生まれているのか。私たちはちゃんと知っているだろうか?
今回向かったのは、大阪府大東市にある明星金属工業株式会社さん。創業から76年、国内外の自動車メーカーの車体をつくる「プレス金型」を設計・製造している会社です。
そして今回見せていただいたのは、2026年5月に発売されたマツダの主力SUV・新型CX-5。その美しいボディを形づくる金型が、まさにここで生まれていました。普段は絶対に入れない、車づくりの最上流。カミタケの「車女子」3人が潜入した1日をレポートします。
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そもそも「金型」って何? 車の”原型”をつくる巨大な鉄の塊

金型とは、ものすごくざっくり言えば「超巨大なたい焼きの型」。車のドア、ボンネット、フェンダー、ルーフ。これらはすべて、平らな1枚の鉄板(またはアルミ板)を、途方もない力でプレスして成形しています。そのとき上下から挟み込む金属の型が「金型」です。つまり、金型がなければ、そもそも車は1台もつくれない。
デザイナーが描いた美しい曲面を、現実の金属の上に「再現できる形」に翻訳する。それが金型メーカーの仕事です。車づくりの、まさに原点でした。
新型CX-5のボディができるまで|金型製作の全工程

案内してくださったのは、なんと社長ご本人。工場に入る前から驚きの連続でした。敷地の花壇に植えられていたのは、この地域でかつて盛んに栽培されていた「河内木綿」。工場の壁には、地元の小学6年生が卒業記念に描いた大きな絵。
「ものづくりに興味を持ってくれる子どもを育てて、就職活動のときに思い出してほしい。長期雇用戦略でやってます」(社長)
笑いながらおっしゃっていましたが、これは相当に本気の話。人手不足が叫ばれる製造業で、10年20年先を見据えて地域と関係を築いている会社なんだと、入り口の時点で背筋が伸びました。
①素材づくり:発泡スチロールを砂に埋めて、鉄を流し込む
金型の材料は、鋳鉄の巨大な塊。この塊のつくり方が独特でした。
- 3Dデータをもとに、まず発泡スチロールで金型の形を削り出す
- その発泡スチロールを砂の中に埋める
- 湯口から溶かした鉄を流し込む
- 熱で発泡スチロールが消え、その形どおりの鋳鉄が出来上がる



いわゆるフルモールド鋳造という手法です。「発泡スチロールが溶けて、鉄と入れ替わる」——文章で書くとシンプルですが、目の前にある数トン級の鉄の塊がそうやって生まれたと聞くと、素直にすごい。
この時点では、仕上がり寸法に対して約10mmの削り代(けずりしろ)が残っています。
②機械加工:無人で削られていく10mm

事務所の技術部門が加工用データを作成し、各機械に読み込ませて無人で削っていきます。10mmの余肉を、ミリ単位まで追い込んでいきます。ここは完全にデジタルの世界。ただし、この後が違いました。
③仕上げ:人の手が入る世界

機械が削れるのはあくまで「ミリの世界」。ここから先、職人さんの手作業が入ります。
明星金属工業さんでは、自動化が進んだ今だからこそ、手作業の技術を次世代に継承する社内の技能実習制度を設けているそうです。目標のひとつが、大阪府の「なにわの名工」。府内で第一人者と認められた技能者に贈られる表彰です。
「デジタル技術と人の技能をどう融合させて、いい金型をつくるか。そこを大事にしています」(社長)
④組付け:部品を組み上げて金型が完成

型本体に金型用の部品や、鋼板を切るための刃物を組み付けていきます。ここまでで1つの金型が完成し、確認が終わるまで約6ヶ月。
そして、そこから納入までさらに半年。合計で約1年です。
私たちが店頭で「新型が出ました!」とご案内するずっと前、1年以上前から、こうして現場は動いているんですね。
⑤トライ:実際にプレスして、直して、また直す

完成した金型で実際に金属をプレスしてみて、不具合が見つかれば細かく修正。試作車をつくり、衝突テストなどで安全性を検証。この試作と修正を何度も繰り返して、ようやく量産に使える金型に仕上がります。
ちなみに取材中、来年秋に発売予定のモデルの金型もありました。……もちろん、詳細は書けません。
プレス工程は「絞って・切って・曲げる」

実際のプレス現場も見せていただきました。並んでいるのは、車の骨格そのもの。迫力が違います。
プレスの基本工程は、大きく3ステップ。
- 1工程目:絞る(成形して立体の形にする)
- 2工程目:外形抜(不要な縁を切り落とす)
- 3工程目:曲げ・穴あけ(フランジを曲げる、穴を開ける)

ここで教えていただいた豆知識をひとつ。ドアやボンネットなど「開け閉めできるパーツ」は、必ずアウター(外側)とインナー(内側)がセットになっている。
外側の美しいパネルと、内側の骨格。2枚1組で1つのパーツになっている——言われてみれば当たり前なのに、意識したことがありませんでした。金型も当然、その両方が必要になります。
また、上級車種のボンネットではアルミ材の採用が増えているとのこと。軽量化のトレンドが、金型の現場にも直結しています。
ミクロンの世界。「髪の毛の半分」を手で仕上げる

今回いちばん衝撃を受けたのが、品質を見る工程でした。
プレスしたパネルに蛍光灯の光を当てる。すると、表面がわずかにうねっていたり、影がよれたりするのが分かります。それが出たらアウト。
なぜそこまで厳しいのか。答えは明快でした。アウターパネルは、お客様が直接目にする面だから。
しかも、その修正が必要になる歪みの大きさは60ミクロン(0.06mm)といったレベル。髪の毛の太さの半分程度です。
「機械では、もう直せない領域なんです」
10トンを超える巨大な金型を、最後の最後はミクロン単位で人の手が仕上げる。この落差に、取材陣は全員声が出ませんでした。
「力加減」だけは、データにしないと伝わらない

さらに驚いたのが、技能伝承の話です。磨きの作業で、いちばん教えるのが難しいのが「力加減」。どれくらいの力で磨いているのか、見ているだけでは分からない。
そこでマツダさんと連携し、ベテランの作業をモーションキャプチャーでデータ化。若手がそのデータを見ながら同じ動作をして、正確な力加減を体得していく——という取り組みをされているそうです。職人技は「見て盗め」の時代から、確実に次のフェーズに来ていました。
上下の型を合わせる作業は「歯の矯正」と同じ

もうひとつ、分かりやすい例え話を。金型の最終工程は、上型と下型をぴったり合わせる作業です。これ、歯医者さんの噛み合わせチェックとまったく同じ発想なんだそうです。
歯医者さんで「赤い紙をカチカチ噛んでください」と言われるアレ。金型では、紙の代わりにオレンジ色の塗料のようなものを使って、当たり具合を確認していきます。

「うちのメンバーは、歯の矯正屋さんみたいなものですね」(社長)
スケールが数トン単位の歯科矯正。分かりやすいけれど、感覚が追いつきません。また、ハンディタイプの3次元測定器も使用されていて、なぞるだけで3Dデータ化できるとのこと。ここでもデジタルと手作業が同居していました。
1,800tプレス機を支える、地下10m・杭24mの構造

工場のスケール感を象徴するのが、1,800tのプレス機。このプレス機、ドンと押したときの振動を吸収するための防振装置がついているのですが、その構造がとんでもない。
- 地上に見えている高さ:12m
- そこから地下に降りている深さ:10m
- さらにその先に打ち込まれた杭:24m
「この辺りは地盤が緩いんです。昔は海だったので」
海だった土地に、地下深くまで杭を打ち込んで、1,800tの衝撃を受け止める。プレス機は床にベタ置きではなく、宙吊りの状態で支えられているとのことでした。
車1台のパネルを打つために、地面の下でここまでのことが起きている。工場見学というより、もはや土木の話です。
現場を支える人たち|「楽しいです」と即答した若手社員

設備の話も圧巻でしたが、これを動かしているのは人。今回は現場の皆さんにもお話を伺いました。
弘田さん(33歳・金型の仕上げ担当)
前職は印刷会社。転職して12年目のベテランです。決め手を伺うと、意外な答えが返ってきました。
「工場が広いこと。それと、工場の中の雰囲気が明るいんですよね」「なにわの名工」への道のりを聞くと、「半分も来てないですね」と苦笑い。
「体力的にも精神的にもしんどい。それを続けていける力がある人が、名工になれるんじゃないかと思います」
山崎さん(42歳・品質管理担当)
1枚の鉄板を金型でプレスしたものを測定したり、光に当てて不具合をチェックしたり。品質の最終ラインを守る役割です。
もともと自動車とものづくりが好きで、この会社の工場規模とプレス機の迫力に惹かれて入社されたそう。
「自分のつくったものが、実際に自動車になる。その過程を知ったときに、面白そうだなと思って」
会社のいいところを聞くと、「ベテランが多くて、経験と知識が豊富な人がたくさんいる。その経験を吸収できるところ」。そして——「食事がおいしいこと」。
小野さん(18歳・磨き担当)
もともと車とバイクが好きで入社したという若手の方。仕事はどうですかと聞くと、迷いなく一言。
「楽しいです」
何が楽しいですか、と重ねて聞くと、
「どんどん磨いていったら、綺麗になっていくのが」
今後の目標はクレーンの免許を取って、クレーン作業ができるようになること。仕事のこだわりは「怪我なく終わること」。
——この3人のお話を聞いて、取材陣の空気が完全に変わりました。私たちがショールームでご案内している1台の向こう側には、こういう人たちがいる。当たり前のことなのに、初めて実感を持って理解できた気がします。
クライマックス:「魂の伝達式」

そして今回の取材の最大の目的が、この式でした。
朝から見てきた金型が、最終的にどんな車になったのか。完成した新型CX-5と対面します。この日は金型製作に携わった社員さんだけでなく、マツダの関係者の方も集合されました。
塗装され、組み上がった実車を前に、現場の方が指差しながら説明してくださいます。

この曲線、ここにシワが残って、なかなか取れなかったんです
見えないところに逃がしをつくって、そこで長さを抑え込んだり。やり方はいろいろあるんですが、要は最後は、ここがお客様の見るところなので
あの美しいサイドのプレスライン。あれは偶然できたものでも、機械が自動で出したものでもありませんでした。何ヶ月もかけて、何人もの人が知恵を出し合って、最後は手で磨き上げて実現した線でした。
「魂の伝達式」とは何か
この式は、単に完成を祝う場ではありません。製造や品質管理の現場で積み重ねた工夫を言葉にして伝え、それを販売店へ、そして最後はこの車に乗るお客様へと、順番につないでいく。そのための式です。
現場の若手社員の方が「絞り型でシワと割れが混在していたのが苦労した点です」と報告する。マツダの方が、こう返します。
「自動車業界はデジタル化やAIでどんどん進化しています。だけど、ものづくりの基本は、こういう金型があってこそだと思っています」
「500万人以上のお客様、そしてそのご家族に、皆様につくっていただいた金型でつくり上げた魂動デザインのマツダ車が届いています」
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新型CX-5のご相談はカミタケモータースへ
カミタケモータースでは、枚方・奈良・大分の各店舗で新車・中古車のご相談を承っています。
- 新型CX-5をはじめとした新車のお見積り・ご購入相談
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- どの車種が合うか分からない方の車種選びのご相談
今回の取材で、私たちは「1台の車がどれだけの思いでできているか」を教えていただきました。その思いを、今度は私たちがお客様にお伝えする番だと思っています。
ご来店・オンラインでのご相談、どちらもお気軽にどうぞ。

明星金属工業の金型づくりと多彩なプロジェクトについては、こちらの記事をチェック
関連リンク: ダイハツ公式「DAIHATSU ONE」
「明星金属工業の金型づくりと多彩なプロジェクト


