車を給油する際に、ガソリンスタンドにいくとレギュラーやハイオク、さらに軽油といった表示を目にします。
軽油やレギュラーは、同じ燃料ではないのでしょうか?ガソリンスタンドに軽油・レギュラー・ハイオクと選択肢がある理由や誤給油してしまった際の対処方法を解説します。
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軽油とレギュラーの基本的な違い

レギュラーガソリンとは
多くの国産車は基本的に「レギュラーガソリン」を使用しますが、輸入車やスポーツカーの多くは「ハイオクガソリン」が指定されています。
燃料の種類を間違えて給油してしまうと、エンジンの性能が大きく落ちてしまうだけでなく、最悪の場合は走行不能になるリスクもあるため、絶対に注意が必要です。これは“ちょっとしたミス”では済まないケースがあるのです。
レギュラー・ハイオク・軽油と聞くと、まったく別のもののように思えますが、実際にはどれも同じ原油をもとに作られています。いわば「兄弟」のような関係にある燃料なのです。
ガソリンは本来、無色透明の液体で、常温常圧では非常に揮発しやすく危険性も高い燃料です。そのため、灯油とすぐに見分けられるように、「オレンジ系の色」に着色して販売されています。実際に流通しているガソリンの99%以上は、私たちが普段乗るガソリン車に使われているのです。
通常のガソリンエンジン車には、このレギュラーガソリンが使われています。
ガソリンにはハイオクもある
ガソリンは大きく分けて「レギュラーガソリン」と「ハイオクガソリン」があります。日本工業規格(JIS)では、レギュラーはオクタン価89.0以上、ハイオクは96.0以上と定められています。オクタン価というのは、走行中に起こるノッキング現象(異常燃焼によってエンジンがぎくしゃくしたり、カンカンと金属音がする現象)を防ぐ指標のことで、数値が高いほどノッキングが起こりにくくなるという意味です。
一方で、ヨーロッパではガソリンのオクタン価がそのまま表示されている国もあります。たとえばドイツでは、レギュラー相当のガソリンが「Super95」やバイオエタノールを10%混合した「Super95E10」、ハイオクにあたるのが「SuperPlus98」といった名称で販売されています。フランスでは「SP95」がレギュラー、「SP98」がハイオクに相当します。ヨーロッパのレギュラーは日本よりもオクタン価が高めなので、エンジンの圧縮比も高く設計されています。そのため、欧州車は日本で乗る場合、ハイオク仕様になっているモデルが多いのです。
軽油とは
軽油は基本的に無色透明から薄い黄色を帯びた色をしています。ただし、他のオイルと区別しやすいように、エメラルドグリーンに着色されている場合もあります。一方、ガソリンも本来は無色透明ですが、判別を容易にするためにオレンジ色に着色されています。そのため、色付きであればガソリンと軽油は見分けやすいのですが、着色されていない軽油だと灯油と区別するのは難しくなります。
軽油には、固まりやすさを示す「流動点」の違いによって5種類が存在します。特1号、1号、2号、3号、特3号と分類され、それぞれ使う季節や地域が異なります。
- 流動点が高く、気温が下がると固まりやすい「特1号」「1号」は夏向け。
- 標準的な「2号」は冬季でも使いやすく、日本の多くの地域で主流。
- さらに低温に強い「3号」「特3号」は、寒冷地での使用を想定しています。
このように、軽油とひと口にいっても、実際には季節や地域ごとに使い分けられているのです。寒い地域に行くときや、季節の変わり目には意外と重要なポイントになります。
燃料の成分や燃焼方式の違い(ガソリンエンジン vs ディーゼルエンジン)
ガソリンや灯油、軽油、重油、潤滑油といった石油製品は、すべて油田から採れる原油を精製して作られています。製油所ではまず原油を加熱炉で約350℃まで熱し、その蒸気を「常圧蒸留装置」で分けていきます。沸点の低いものから順番に取り出す仕組みになっていて、たとえば35~180℃の範囲で留出されるのがガソリン、240~350℃の範囲で留出されるのが軽油です。
つまり、私たちが普段スタンドで給油しているガソリンや軽油は、もともと原油の「どの温度で取り出されたか」によって性質が分かれているわけです。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違い
エンジンの仕組みの違いも、この燃料の性質に由来しています。ガソリンは常温常圧でもよく燃える特性を持っているため、ガソリンエンジンではシリンダー内でガソリンと空気を混ぜて圧縮し、点火プラグの火花で燃焼させます。
一方、軽油は高い圧力と温度でよく燃えるため、ディーゼルエンジンはまず空気だけを強く圧縮して高温にし、その状態で軽油を噴射して自然着火させます。この仕組みの違いから、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて圧縮比を高く設計する必要がありますが、その分熱効率も高くなります。さらに、シリンダー全体でまんべんなく着火できるので大排気量化が可能で、荷物を積んだトラックやバスのような重量級の車に適しているのです。
給油時に間違えやすいポイント

ノズルの色(軽油=緑、レギュラー=赤)
セルフ式のガソリンスタンドに行くと、給油ノズルの色が「赤・黄・緑」で分けられていますよね。これは、ユーザーが燃料を間違って給油しないようにするためで、法律によって定められているルールなのです。
消防法の中に「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所に係る運用について」という文書があります。その中で、セルフ式ガソリンスタンドにおける給油ノズルの色と表示名がはっきりと定められています。
- 赤いノズル:レギュラーガソリン
- 黄色いノズル:ハイオクガソリン
- 緑のノズル:軽油
つまり、私たちがセルフスタンドで目にする「赤・黄・緑」のノズルは、単なる業界の慣習ではなく、法律に基づいたルールなのです。
なぜわざわざ法律で色まで決めているのかという理由はシンプルで、「給油の間違いを防ぐため」です。ガソリン自体がオレンジ色に着色されているのと同じように、ノズルの色も視覚的に識別できる工夫になっています。
逆に言えば、ユーザーが自分で給油する心配がないスタンド、つまりスタッフがすべて給油してくれるフルサービス式のスタンドでは、この法律は適用されません。そのため、必ずしも赤・黄・緑に統一されている必要はなく、各社が自由に色を決めることができます。
セルフ式では「ユーザーが間違えないこと」が最優先なので、全国一律で赤・黄・緑が決められています。一方、フルサービス式ではスタッフが給油するため、ユーザーが直接ノズルを扱うことはなく、間違いのリスクもありません。だからこそ、フルサービスのスタンドでは赤・黄・緑以外のノズルを見かけることもあるのです。
セルフスタンドでの誤給油が多い理由
セルフスタンドで誤給油が多い理由は、意外とシンプルです。ガソリン車が多かったものの、最近ではディーゼル車もあるため、いつもの習慣でディーゼル車にガソリンエンジンを給油してしまうことがあります。
さらに考え事をしていたりするのも、理由になります。ディーゼルの乗用車でも、エンジン音が以前のようにガラガラと音がしないモデルもあるので、ガソリン車と思ってしまうのです。
いずれにしても、注意が散漫になると誤給油をしてしまうことがあります。
軽自動車でも軽油は使わない!よくある勘違い
名前の響きから「軽自動車=軽油」と思ってしまう方も少なくないのですが、実は軽自動車はすべてガソリン車です。つまり、軽油を燃料とする車ではありません。
ところが、セルフ式ガソリンスタンドが普及して以降、「軽」という言葉に引っ張られて、誤って軽自動車に軽油を給油してしまうケースが発生しています。
もしガソリン車に軽油を入れてしまうと、最初はエンジンがかかり走行できることもあります。しかし、すぐに不完全燃焼を起こし、点火プラグにススが付着します。その結果、白煙が上がったり、最悪の場合エンジンが停止してしまうのです。
路上で突然エンストして動けなくなれば、大きな事故につながる危険もあります。実際にレッカー移動になったり、高額な修理が必要になることもあるため、「軽自動車はガソリン車」という点をしっかり覚えておくことが大切です。
誤給油してしまった場合の対処法

エンジンをかけないことが最優先
レギュラー仕様の車にハイオクガソリンを入れても、すぐにエンジンが壊れることはありません。ただし、レギュラー車はあくまでレギュラーガソリンを入れたときに最も性能を発揮できるよう設計されています。
一部では「ハイオクに含まれる清浄剤によって、エンジン内部がきれいになる」といった意見もありますが、それでもやはりメーカーが指定している燃料を使うのが理想です。無理にハイオクを入れる必要はありません。
逆に、ハイオク指定の車にレギュラーを入れると、燃費やパワーが落ちたり、ノッキングが起きるリスクが高まります。こちらも即座に壊れるわけではありませんが、長期的に見ればエンジンに負担がかかります。やはり指定どおりハイオクを給油するのが安心です。
最も避けたいのが、ディーゼル車にガソリンを入れてしまう、あるいはガソリン車に軽油を入れてしまうケースです。この場合には次のような症状が現れます。
- ノッキングが発生する
- 白煙や黒煙が出る(燃料や車種によって煙の色が異なる)
- エンジンが停止して動かなくなる
このトラブルは深刻で、最悪の場合はエンジン交換が必要になることもあります。対処方法は限られており、安全な場所に停車して、燃料タンクから誤って給油したガソリンや軽油を抜き取るしかありません。
すぐにスタッフやロードサービスへ連絡
ガソリンエンジン車に軽油を、もしくはディーゼルエンジン車にガソリンを給油してしまったことに気がついたなら、すぐに給油を停止します。
また、エンジンをかけないようにして、加入しているロードサービスに連絡してレッカー移動できるように手配しましょう。それまでの間、車を移動させるのが難しくなるため、ガソリンスタンドのスタッフに連絡することも必要になるでしょう。
エンジンをかけて移動するのではなく、ディーラーや整備工場で燃料の抜き替えをしてもらう必要があります。正しく対処して車を故障させないようにしておきましょう。
修理・洗浄にかかる費用の目安
誤ってガソリン車に軽油を給油してしまった場合、修理費用は車の状態や被害の範囲によって大きく変わります。おおよそ2万円から30万円程度まで幅があり、「どのタイミングで気づいたか」が大きなポイントになります。
給油中に間違いに気づければ、被害は最小限で済みます。この場合は燃料タンクの洗浄だけで対応できるため、費用も比較的抑えられます。
しかし、そのままエンジンをかけて走行してしまうと話は別です。エンジン内部まで軽油が回ってしまい、より大掛かりな修理が必要になります。
修理費用の目安
- 給油中に気づいた場合(タンク洗浄のみ):2~5万円程度
- エンジンをかけてしまった場合(エンジン内の洗浄が必要):5~15万円程度
- エンジンが停止するまで走ってしまった場合(燃料系・排気系の洗浄や部品交換):最大30万円前後
誤給油による修理費用は、ガソリン車よりもディーゼル車の方が高額になる傾向があります。というのも、ディーゼル車は構造上、誤った燃料がシステムに入り込んでしまうと深刻なダメージにつながりやすいからです。車種や車両の状態によって差はありますが、10万円以上かかってしまうケースも珍しくありません。
誤給油をしてしまった場合には修理費だけでなく、レッカー移動の費用も発生する可能性があります。レッカー代は一般的に1~3万円ほどが相場です。誤給油に気づかずエンジンが止まってしまい、路上で立ち往生となれば避けられない出費となります。
加入しているロードサービスによっては、一定の距離まで無料でけん引してもらえることもあります。条件をよく確認しておき、無理に車を移動させないようにしましょう。
燃料を正しく選ぶためのチェックポイント

車検証・給油口のラベルを確認
まずは自分の車に給油する燃料を確認しておきましょう。車検証や給油口のラベルを確認しておくなら、ガソリンスタンドに行った際にどのノズルを使うべきなのか事前に把握できます。
また自分の車を他の人が給油したり、普段は乗らない家族が使うことがあるなら、誤給油防止のリングやステッカーを貼ることもできます。
給油口の分かりやすいところに目立つ仕方でアピールできるので、ノズルの色と確認がしやすくなります。
輸入車・高級車ではハイオク指定も多い
輸入車には「ハイオクガソリンの使用」を指定している車種が多くあります。これは、搭載されているエンジンが高性能かつ高圧縮比での燃焼を前提に設計されているからです。高圧縮エンジンは、強い圧力のもとでガソリンを燃焼させることで大きなパワーを発揮します。その一方で、オクタン価の低い燃料を使うとノッキング(異常燃焼)が起こりやすくなるため、ハイオクのようなオクタン価の高い燃料が欠かせないのです。
ハイオクガソリンは、こうした高性能エンジンでも安定して燃焼できるように設計されています。そのため、スポーツ走行や高速道路での加速時など、パワーとレスポンスが求められる場面では、ハイオクを使うことでエンジン本来の性能をしっかりと引き出せます。輸入車やスポーツカーにとっては「性能を最大限に活かすための必須条件」といっても過言ではありません。
では、ハイオク指定車にレギュラーガソリンを入れてしまったらどうなるのでしょうか。実際のところ、すぐに深刻なトラブルが起こるわけではありません。確かに力強さが少し物足りなくなったり、エンジンの調子がイマイチと感じることはありますが、多くの場合は走行可能です。そして、その後にハイオクガソリンを継ぎ足してやれば、不調は解消するケースがほとんどです。
燃料を誤るとエンジンに深刻なダメージ
ディーゼル車とガソリン車は、エンジンの仕組みそのものが異なります。そのため、誤ってディーゼル車にガソリンを給油してしまうと、燃料噴射ポンプが破損するなど、重大な故障につながる恐れがあります。
もしディーゼル車にガソリンを入れて走り出してしまった場合、最初は動いても徐々にパワーが落ちていきます。そして、排気ガスに白煙が混じり始め、やがて噴射ノズルの故障にまで発展してしまうのです。万が一誤給油に気づいたら、すぐにエンジンを停止し、自動車販売店や整備工場に連絡することが大切です。
逆に、ガソリン車に軽油を入れてしまうとエンジンが壊れる危険性があります。ガソリンのように揮発しやすい燃料の中に、燃えにくい軽油が混ざることで燃え残りが発生し、エンジン内部に不完全燃焼の汚れが溜まってしまうのです。その結果、エンジンがかからなくなったり、走行中に停止する事態に至ります。
まとめ
軽油とレギュラーは同じ原料をベースにしていますが、蒸留する温度が異なっているので、別の燃料となります。軽油を用いるディーゼルエンジン車には軽油を、ガソリンエンジンを用いていてハイオク指定になっていない車には、レギュラーガソリンを給油します。
間違った燃料を給油した場合には、間違えた種類によってはエンジンをかけない方が故障しないため、レッカーサービスに依頼をして車を移動させてもらいましょう。




