クーラント選びと交換時期!エンジンを守るためのメンテナンス

クーラント

車のエンジンがオーバーヒートしないように、冷却システムの管理は重要です。その中心にあるのがクーラント液の管理です。クーラント液は、エンジンを冷やすために使われる液体で、車によって適切なタイプが異なります。

エンジンが正しく動くためにも、エンジンを冷やすためのクーラント液の働きは重要ですし、定期的な交換が必要です。この記事では、クーラント液の役割や補充・交換方法、そしてもしクーラント液が漏れた場合の対処法について解説します。

目次

クーラントとは?冷却液の役割

冷却水

クーラント液は、車のエンジンが過熱しないように冷却するための液体です。この液体はエンジン内部で熱を吸収し、車の前部にあるラジエーターで冷却された後、再びエンジンへ戻ります。

しかしクーラントはエンジンを冷却するという目的があるので、通常の水とは異なる機能を持っています。

クーラントとは

  • エンジンを冷やすための液体
  • 不凍液で凍りにくい
  • 色や成分によって種類が異なる

クーラントが果たす重要な機能とは

クーラント液の大切な役割は、冬場でも凍らないことと、長期間使用してもエンジン内部を錆や腐食から守ることです。そのために、ただの水ではなく、凍りにくいグリコール系溶媒に防錆剤などの添加剤を加えた特殊な液体が使用されています。

クーラント液には「不凍液」とも呼ばれるものがあり、その種類は技術の進化とともに増えています。日本の国産車でよく使われるクーラント液は、赤、緑、青、ピンクの4色です。

さらに、ディーゼル車用のLLCや輸入車用LLC、競技用のLLCなどもあり、これらは色や成分が異なるため、車の種類に合わせて正しいクーラント液を選ぶことが重要です。

このように、クーラント液はエンジンを保護し、最適なパフォーマンスを維持するために欠かせない要素の1つです。自分の車に合ったクーラント液を選び、適切に管理することで、愛車の健康を長く保つことができます。

クーラントの種類とそれぞれの特徴

冷却水

クーラント液はエンジンを正常に動かす上で欠かせない要素ですが、その寿命によって大きく2種類に分けられます。それぞれの特徴と着色について解説します。

  • 通常タイプのLCC
  • 長寿命なスーパーLCC

LLCは通常タイプ

まずはLLC(Long Life Coolant)です。LLCは「ロングライフクーラント」と呼ばれ、約2年ごとに交換が推奨されます。このタイプのクーラント液は数十年前に開発され、従来のクーラントに比べて寿命が長いのが特徴です。その名の通り「長寿命」で、車検のタイミングと同じくらいで交換することが多いです。

赤と緑はエチレングリコールを主成分とし、約2~3年の耐用年数があります。これらは「LLC(ロング・ライフ・クーラント)」と呼ばれており、長寿命が魅力です。

スーパーLLCは長寿命

もう1つのクーラントはスーパーLLC(Super Long Life Coolant)。このクーラント液は現在の主流で、LLCよりもさらに長持ちします。寿命は約7年から10年で、メーカーによっては「交換不要」としているものもあります。スーパーLLCはピンクや水色に着色されており、これも識別しやすい特徴です。

一方、最新の青とピンクのクーラント液は「スーパーLLC」と称され、プロピレングリコールを主成分としており、耐用年数はなんと7〜10年に及びます。

このように、LLCとスーパーLLCでは、使用期間が異なりますし、色による識別も可能です。エンジンの健康を長く保つためには、自分の車に合ったクーラント液を選び、適切なタイミングでの交換が大切です。

クーラントの正しい選び方とは?

冷却水

クーラントは基本的に純正採用されている色と種類を使うのがおすすめです。それでも、使用環境に合わせてクーラントを選択して交換することもできるでしょう。

クーラント選びのポイント

スポーツ走行を楽しんでいる方には、高い冷却性能を持つ冷却水を選ぶのが重要です。そんな方におすすめなのがスポーツクーラントと呼ばれるタイプ。この冷却水は高い冷却性能だけでなく、消泡性・防錆性・防蝕性にも優れています。

通常のクーラントにはエチレングリコールが不凍効果を持たせるために用いられていますが、スポーツクーラントにはポリプロピレングリコールが使われています。この成分は熱しやすく冷めやすいのが特徴です。

一方、コストを抑えて冷却水を選びたい方には、スーパーロングライフクーラントがおすすめです。リーズナブルな価格で購入できる上、耐熱性・耐久性にも優れています。

クーラント液を全量交換すれば、4年間または10万km走行まで効果が持続するタイプもあるほどです。もちろん定期的なメンテナンスは必要ですが、ズボラな方でも安心して使えますね。

また、特に欧州車などでは、メーカーが指定した専用のクーラント液の使用が義務付けられていることが多いです。安価な他社製品を使うのは避け、指定されたクーラント液を使うのがベストです。

LLCやスーパーLLCなど異なる種類のクーラント液を混ぜると、性能が大きく低下したり、凝固して配管が詰まる恐れがあるので、混合は絶対に避けましょう。それぞれの製品には特有の成分が配合されているため、適切な使用をしましょう。

よくあるクーラント選びの誤解を解消

クーラントを使うときに、水で代用できないか検討する方もおられますが、結論からすると水は使用できません。

水では代用できない理由

水を使用してしまうと、防錆できなかったり、耐凍結性がないのでエンジンに損傷を与える可能性があります。

防錆できないため

クーラントには防錆剤も含まれているので、エンジン内部や冷却経路に錆が発生しないようにできます。水を使っているとどうしても錆が出てしまうので、クーラントを使用しましょう。

錆が発生すると、内部が劣化したり、冷却ができなくなるので注意しましょう。

耐凍結性がないため

クーラント液には、エチレングリコールやプロピレングリコールのような凍結温度が水よりも低い成分が入っています。

冷却水が凍ってしまうと、配管やエンジンに損傷を与える可能性があるので凍結しづらいクーラント液を使用しましょう。

クーラントの交換時期と正しい交換方法

冷却水

クーラント交換の適切なタイミング

クーラント液が沸騰しやすいシリンダーヘッド周辺など、エンジンの高温になる部分では、気泡が発生することがあります。これが冷却効率を大きく悪化させます。

クーラント液には気泡を素早く消すための消泡剤も配合されていますが、熱や時間が経過するとこの消泡剤も劣化してしまい、その効果が低下します。

たとえば、新しいクーラントと使い古したクーラントを同じ時間だけ容器に入れて振った後の様子を比べると、古いクーラントは泡だっているのがわかります。これは消泡剤が劣化して機能していない証拠です。

クーラントが古くなってきていると判断できるなら、交換を考慮してもよいでしょう。クーラントを交換する際に、おおよその交換時期の目安がありますが、もし早めに交換した方がよいほど劣化したなら早めの交換をおすすめします。

自分でできるクーラントの交換方法

クーラント液の交換は、エア抜きなどの作業が難しいため、専門の技術が必要とされます。さらに、クーラント液は甘い匂いがするため、小さな子供やペットが誤って飲んでしまうと非常に危険です。

万が一飲んでしまった場合、嘔吐や下痢、昏睡、失神などの重篤な症状を引き起こし、最悪の場合は命に関わることも。だからこそ、クーラント液の交換はディーラー、ガソリンスタンド、整備工場などのプロに任せることをおすすめします。

冷却水の交換作業は、自分で行うよりも整備工場に依頼するのが安全です。しかし、どうしても自分で交換したい方のために、手順をみていきましょう。

必要なもの

  • 凍結温度の適したクーラント液(お住まいの地域に合わせて選びましょう)
  • クーラント全量が入る容器
  • 1.5Lエンジンの場合は5L前後
  • 2.0Lエンジンの場合は7L前後
  • 車に必要な工具

手順

1:エンジンを冷やす

まず、火傷を防ぐためにエンジンが十分に冷えていることを確認しましょう。

2:排液口のドレンボルトを緩める

車の前下部に潜り、ラジエター下部にある排液口を塞いでいるドレンボルト(ドレンコック)を緩めます。クーラント液が排出されるので、用意した容器で受け止めます。

上部のラジエターキャップを開けると、より早く排出されます。

3:新しいクーラント液を注入する

ラジエター内のクーラント液が全て抜けたら、ドレンボルトとドレンコックを取り付けて排液口を塞ぎます。

次に、ラジエターキャップから新しいクーラント液を少しずつ注ぎます。冷却通路内は狭く、クーラント液が流れ込むまでに時間がかかるので、ゆっくりと溢れないように注ぎ入れましょう。

4:エア抜き

ラジエターの注ぎ口付近までクーラント液が入ったら、冷却通路内の空気を抜くためにラジエターキャップを開放したままエンジンをかけます。

しばらく放置すると、通路内に溜まった空気が気泡となって出てくるので、液面が下がったらクーラント液を補充しましょう。

5:最終チェック

エンジンが稼働してクーラント液が温まると、ラジエター背面の冷却ファンが突然作動することがあるので、怪我をしないように注意しましょう。

エンジンが温まり気泡が出なくなったら、ラジエターキャップを締めて交換作業は完了です。

6:廃棄物の処理

排出した古いLLC(ロングライフクーラント)は産業廃棄物になるため、整備工場や廃棄業者に廃棄を依頼しましょう。

以上が冷却水の交換手順です。交換作業は手間がかかる上、エンジンの安全にも関わるので、不安な方は無理をせず整備工場に依頼するようにしましょう。

クーラントが漏れる原因と対処方法

冷却水

クーラントリークの原因と修理方法

ラジエーターの損傷・劣化による漏れ

ラジエーターは、高温になった冷却水の温度を下げる重要な役割を果たしています。しかし、冷却水が漏れてしまうことがあるのです。

主な原因は、ラジエーターが車体の前方に設置されているため、走行中の飛び石などで穴が開いてしまうこと。また、縁石に乗り上げたり経年劣化で樹脂部分にヒビが入ることで冷却水が漏れてしまうこともあります。こういった場合、ラジエーターを交換する必要があります。

ウォーターポンプ本体やガスケット不良による漏れ

ウォーターポンプは、冷却水を循環させる役割を担っています。エンジンとウォーターポンプの間には、冷却水が漏れないようにガスケットという部品が使われていますが、これが劣化すると密着力がなくなり、冷却水が漏れてしまいます。

さらに、ウォーターポンプ内部にはメカニカルシールという部品があり、これも冷却水の漏れを防いでいますが、劣化すると冷却水が外に漏れてしまいます。ウォーターポンプからの漏れを修理するには、ウォーターポンプとガスケットを同時に交換する必要があります。

ラジエーターホース・ヒーターホースの密着不良による漏れ

ラジエーターホースとヒーターホースは、冷却水を循環させる通り道として、ラジエーターやヒーターコアに接続されています。しかし、ホースが劣化すると密着力がなくなり、ホースのすき間から冷却水が漏れてしまいます。ホースからの漏れが確認された場合、ラジエーターホース・ヒーターホースの交換が必要です。

シリンダーヘッドガスケットの不良

エンジンは大きく分けてシリンダーヘッド、シリンダーブロック、オイルパンで構成されています。その中で、シリンダーヘッドとシリンダーブロックの密着力を高めるために使われているのがシリンダーヘッドガスケットです。

しかし、このガスケットが劣化して密着不良を起こすと、すき間から冷却水が漏れてしまいます。この場合、シリンダーヘッドガスケットを交換すれば冷却水の漏れを止めることができます。

車の冷却系統のトラブルはエンジンに大きな影響を与えるため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。

クーラントが漏れたときの解決策

クーラントがいきなり漏れてしまうのは、上記の見出しで説明した各部品やガスケット、さらにゴム製品の劣化です。またオーバーヒートしてしまうと、クーラントがなくなってしまいエンジンの冷却ができなくなります。

クーラントがなくなってしまう理由

  • ガスケットやゴム製品の劣化
  • オーバーヒート

ガスケットやゴム製品の劣化

ガスケットやゴム製品の劣化が原因の場合は、エンジンが冷却できないことから警告灯が点灯します。その場合は、すぐに安全な路肩に停めて、エンジンを停止しておきましょう。

その後、レッカーで整備工場に移動させる必要があります。

オーバーヒート

また別のクーラントがなくなってしまう原因はオーバーヒートです。エンジンのオーバーヒートに気づく一番のサインは、ダッシュボードにある水温計の針が上昇することです。もし、針がHマークに近づいたり、その手前で止まったり、警告灯が点灯したりしたら、それは異常の兆候となります。

この場合、すぐに安全な場所に車を停めてエンジンを止めましょう。そして、焦ってボンネットを開けたり、ラジエーターキャップを開けたりすると、熱い蒸気や液体でやけどをする危険があるので、この行為は避けてください。

エンジンが冷えた後は、冷却水やエンジンオイルの状態をチェックします。冷却水が異常に減っている場合、液漏れの可能性があります。エンジンオイルについても、量が少なかったり、異物が混じっていたりする場合は、何かしらのトラブルが起こっている可能性が高いです。このような場合は、専門家に相談するのが良いでしょう。

クーラントが減っているなら充填しておきましょう。加入している自動車保険によっては、オーバーヒート時のロードサービスを無料で受けられることもありますので、保険の契約内容を確認しておくと安心です。

クーラントを定期的に交換して安心してドライブを!

クーラントは定期的に交換することで、エンジンの冷却性能を維持できます。基本的には車検のタイミングで交換する方が多いですが、耐久性の高いクーラントを使用しているなら、指定されている頻度で交換しましょう。

また、普段の点検をしっかりと行い、クーラントが十分あるかみておきましょう。定期的にクーラントを交換して、安心してドライブするのをおすすめします。

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