ホイールを選ぶ際によく見かける「PCD」という用語。意味をご存じでしょうか。PCDは非常に大切な規格で、数値が同じものを選ばないと、ホイールを車に装着できません。
今回は、このPCDの意味、種類、変更方法、変更メリットとデメリットなどを解説します。
PCDとは何?

PCDとは「Pitch Circle Diameter」の略語で、そのまま翻訳すると、「ピッチ 円 直径」となります。これでは何のことだか分からないでしょうが、簡単に説明すると、ホイールの中心部にある4つまたは5つの穴を結んで円とした場合の直径を表します。
ホイール選びで必要|PCDの種類

PCDはホイールを装着するときに必ず確認しなければいけない数値です。ホイールのボルト穴の数が同じでも、PCDの数値が違うと装着できません。PCDの単位はmm(ミリ)で表されます。
ではPCDにはどんな種類があるかというと、ほとんどの国産車では5H114.3もしくは5H100、4H100となっています。Hはボルト穴の数のことです。大型のSUVは6H139.7です。例外として、レクサスLS、ホンダレジェンドは5H120です。
5H100に該当する車種はインプレッサ、XV、レガシィ、エクシーガ、BRZ、トヨタの86、プリウスなど。ただ、年式やグレードによって数値が異なる場合もあります。
国産車と輸入車の違い
国産車のPCDの数値を挙げましたが、国産車と輸入車ではPCDの数値が異なっています。代表的な輸入車のPCDを挙げてみましょう。
- メルセデス:全車 5H112(Gクラスのみ5H130)
- VW・Audi:全車 5H112(VWトゥアレグ、アウディQ7は5H130)
- ポルシェ:5H130(マカンのみ5H112)
- BMW:以前は120mmだったが、2015年ことから5H112になっている
PCDの測り方

PCDを計測するには、自分でメジャーなどで計測する他に、計測ゲージを活用する方法があります。
自分で計測する
4穴ホイールの場合
4つある穴の1つから、対角の穴の中心までを測ります。110mmであれば、PCDは110です。6穴ホイールの場合も同様に算出可能です。
5穴ホイールの場合
対角にある穴がないので、対角の隣の穴までの距離を計測します。その後、早見表などを活用して、PCDを算出します。
PCDの早見表
PCD | 距離 |
PCD110 | 約104.6mm |
PCD112 | 約106.5mm |
PCD114.3 | 約108.7mm |
PCD120 | 約114.1mm |
PCD120.65 | 約114.7mm |
計測ゲージを使う
計測ゲージを活用すると、4穴、5穴に関係なく、簡単にPCDを測れます。並んでいる2つの穴にゲージの突起部分を差し込みます。そうすると、PCDの値を示してくれるので、誰でも簡単にPCDを見分けることが可能です。
PCDを変更する方法
PCDの変更方法を解説します。ホイールを購入したのにPCDが合わなくて装着できないなどの場合は、PCDを変更することで装着できるようになります。純正ホイールとは違うホイールも装着可能ですが、その方法は次の3つです。
- PCD変換スペーサーを使う
- ホイールを加工する
- ハブを交換する
それぞれのやり方を見てみましょう。
PCD変換スペーサーを使う
PCD変換スペーサーをつけると、PCDが変わり、PCDが合わないホイール、他車種用のホイールも装着可能になります。例えば、PCD100から114.3に変換できるので、ホイールの選択幅が広がります。
ホイールを加工する
ホイールを加工することでもPCDの変更ができます。やり方としては、PC120のホイールにPC100の穴を開けます。
ハブを交換する
ハブを交換・移植することでもPCDの変更ができます。PCDが違う車に別の車のハブを移植するという方法です。
PCDを変更するメリット
PCDを変更するメリットはどのようなことか考えてみましょう。変換方法ごとのメリットも見てみます。
まず変更そのもののメリットは、ホイールの選択肢が増えることです。純正のホイールとは違うもの、入手が困難なホイールなどもはかせることができるようになります。
PCD変換スペーサーを利用するメリット
PCD変換スペーサーを利用するメリットは、手軽にPCDを変更できて、選択肢が広がることです。PCD100はホイール数が少なく、PCDスペンサーで変更することで希望のホイールを装着できるようになります。
ホイール加工のメリット
ホイール加工でPCDを変更する場合、車体そのものはいじりません。そのため、車体は純正のままで、ホイールもいつでも純正に戻せます。もちろん、希望のホイールを選べるのもメリットです。
ハブを交換するメリット
ハブの交換はPCD変換スペーサーの取り付けよりも安全な作業になります。また、PCD変換スペーサーのように厚みが生じないので、リムの深いホイールも装着できます。
PCDを変更するデメリット

続いて、PCDを変更するデメリットを見てみましょう。
PCDスペーサーを取り付けるデメリット
PCD変換スペーサーの取り付けには様々なデメリットがあります。
まず料金が割高になりやすいです。PCD変更を行う場合は、PCD変換スペーサーを4つ購入することになるからです。
次に厚みが20mmあるのがPCD変換スペーサー。スペーサーを取り付けると、20mmの厚み分だけホイール外に出ることになります。ボルトが短くなり、強度も落ちます。深リムのホイールもはけなくなるでしょう。
強度が落ちたホイールからPCD変換スペーサーが外れたり割れたりすることもあります。特に安価なスペーサーを使っていたり、トルク管理がしっかりできていなかったりする場合に起きやすいリスクです。
そのようなリスクを回避するために、安価なスペーサーは使用しない、トルクレンチを使用するなどの対策を講じましょう。トルクレンチとはボルトやネジの締め付け具合を測定できる機器で、トルク管理で力を発揮します。
PCD変換スペーサーを長い間つけっぱなしにしておくと、さびが生じやすくなるのも困る点です。さびによってハブとスペーサーが固着してしまい、外れなくなることもあるのです。外れないと、純正ホイールに戻そうとしても戻せません。
正木の体験談

昔所有していたレガシィB4(BM9)のホイールを変えようと購入。良いなと思ったホイールはPCD114.3。車の方はPCD100でした。これでは取り付けられず、仕方がないので100→114.3に変換できるワイドトレッドスペーサーとそれ用のナットを追加で購入し取付に成功しました。
このとき、ハミタイにならないようにスペーサーの幅とホイールのインセット(ホイールオフセット)に気を付けよう。
ホイール加工のデメリット
ホイール加工を行うには特殊な技術が必要で、自分ではできないので、専門店に依頼することになります。依頼時の費用は1本約20,000円と高いです。
また、加工に対応できるホイールも限られています。そのため、ホイールの選び方がポイントになります。ホイールを選ぶ際は、次のような基準を参考にしてください。
加工に適したホイール
- ディスク裏面がフラットなホイール
- キャッププレートでホール穴が隠れるホイール
- 溶接埋めを必要としない同穴同士の加工
- 溶接埋めを必要としない同ピッチの加工
※参照元:オフセット/PCD変更
加工に適さないホイール
- すでにマルチピッチが施されたホイール
- キャッププレートのないオープホールタイプ
- スポーク自体に穴開けがしてあるホイール
- センターオーナメントサイズより小さくなるピッチ加工
- トラックや4駆など車重がかかるホイール
- ディスク裏面の逃げ下駄厚みが深いホイール
※参照元:上記に同じ
ハブを交換するデメリット
ハブを交換する場合、外すのは純正ハブだけでなく、ブレーキローター、ブレーキキャリパーなどの関係部品も関わってきて、かなり面倒な作業になります。面倒と言うだけでなく、費用もPCD変換スペーサの取り付けよりも高くなります。
また、作業が面倒と言っても、慣れていない素人が行うべきものでもありません。素人がハブの交換をすると、走行中に思わぬ事故が起きることがあるからです。ハブ交換は専門のプロフェッショナルに依頼してください。
ホイール交換の際にはPCDに注意
ホイール交換時にはチェックするべき数値がいろいろあるのですが、そのうちの1つがPCDです。PCDは4つか5つあるボルト穴を結んだ円の直径を表す数値で、単位はmm(ミリ)となっています。
PCDが違うホイールを車にはかせようとしても装着できません。必ずPCDの値を確認して、適切なホイールをはかせるようにしましょう。
ただ、PCDが合わない場合は、PCDの変更もできます。この記事ではPCD変更の方法も紹介しましたから、ぜひ参考にしていただき、実行してみてください。ただ、自分でやるのは難しいことでもあるので、専門家に依頼しましょう。