エンジンオイルは、定期的に交換すべき車の消耗品というイメージがあるかもしれません。しかしエンジンオイルにどのような種類の違いがあるのか、そしてエンジンオイルの選び方を理解している方は多くないでしょう。
エンジンオイルには、粘度や規格などがあり、車やコンディションに合わせて選択するのがおすすめです。この記事では、エンジンオイルの役割や種類の違い、選び方のポイントを詳しくご紹介します。
エンジンオイルは?
- エンジンの潤滑や洗浄などを行っている消耗品
- 定期的に交換してコンディションを保つ
- エンジンオイルは鉱物油や合成油がある
エンジンオイルとは?
エンジンオイルとは、エンジンの性能を発揮させるのに大切な役割があります。エンジンのシリンダー内で往復しているピストンや他の部品が円滑に動作するために、潤滑や洗浄などの役割がある消耗品です。
複数の役割がありますが、エンジンがスムーズに動くのに必要不可欠なのがエンジンオイルです。
エンジンオイルの役割
エンジンオイルの役割は、5つあります。
- 潤滑
- 密封
- 洗浄
- 冷却
- 防錆
これらの役割がエンジンの効率に大きな影響を与えています。
潤滑
エンジンオイルの主要な役割ともいえるのが、潤滑。エンジンのシリンダー内の摩擦を低減する作用です。
密封
シリンダーとピストンの間を密封する作用です。シリンダー内の爆発のエネルギーが逃げないようにします。
密封されていないと、シリンダーとピストンの間から、燃焼によるエネルギーが抜け出してしまいます。
洗浄
シリンダー内は、燃焼を繰り返すため、スラッジと呼ばれる汚れが蓄積してしまいます。エンジンオイルは、エンジン内を巡回しているため、汚れが溜まらないようにする作用があるのです。
エンジンオイルは定期的に交換しますが、オイルが汚れているのは、この洗浄作用が働いているためです。
冷却
爆発を繰り返すエンジン内は、高温になります。エンジンオイルは熱を吸収して、オイルパンで冷却されます。
オイルパン、もしくはオイルクーラーで冷却されるため、エンジンオイルは冷却も行っているのです。
防錆
エンジン内が高温になると、温度差によって水分が発生します。その水分が錆の原因となるため、エンジンオイルが防錆の役割を果たします。
エンジン内に錆が発生すると、整備に費用がかかるため、防錆作用も大切な役割です。
エンジンオイルの種類
オイルはベースになっている油によって成分や性質が異なります。粘度や性能だけでなく、ベースオイルの違いがあります。
ベースオイルに使われるのは、以下の3種類です。
- 鉱物油:価格が安いオイル
- 部分合成油:バランスが取れたオイル
- 化学合成油:性能が高いため価格も高い
それぞれの特徴をみていきましょう。
鉱物油
鉱物油は、原油から不純物を取り除いたタイプのオイルです。他のベースオイルと比較して、コストパフォーマンスに優れているオイルが多いので、頻繁に交換する方によいでしょう。
しかし熱や外気の影響を受けやすく、酸化しやすいというデメリットがあります。高負荷の走行シーンが多い方や高速道路などで長距離運転をする方は、早めの交換がおすすめです。
部分合成油
部分合成油は、鉱物油と化学合成油を20%以上配合したオイルを使用しています。性能が高くてもコストパフォーマンスに優れているなど、バランスが取れたオイルといえるでしょう。
鉱物油はどうしても低温時や揮発性といったデメリットがありますが、弱点を合成油で補います。高負荷な走行シーンが多いなら部分合成油を選択するのもおすすめです。
化学合成油
化学合成油は、高品質なオイルとなっています。不純物が取り除かれて、始動性もよく、高負荷でも劣化しにくいオイルです。
化学合成油は、メーカーによって「全合成油」や「フルシンセティック」などの表記があります。
エンジンオイルの規格は?
エンジンオイルには、規格によってグレードが設定されており、オイルの性能を見分けられます。もちろんすべての車に高価なエンジンオイルが必要な訳ではなく、車にあったオイル選びが必要です。
API規格
米国石油協会(API)とアメリカ材料試験協会(ASTM)、アメリカ自動車技術者協会(SAE)という3つの組織が定めている規格で、ガソリン車はS、ディーゼル車はCで始まる表記です。
最新の規格まで13段階に分かれており、アルファベットが進むと性能が高くなるため、省燃費を期待できます。後のアルファベットになると、次のILEDSAC規格と併せて考慮します。
ILSAC規格
エンジンの高出力化や環境負荷低減を目的として、日米の自動車メーカー組織(ILSAC)が制定したオイル規格です。API規格と併せて使われる規格ですが、省燃費性能を考えられています。
API規格とILSAC規格の一覧表
API規格 | ILSAC規格 | 特徴 |
SA | ― | 添加物を含んでいないベースオイル |
SB | ― | 最低限の添加物を配合したオイル |
SC | ― | 1964~67年型のガソリン車に使用できる品質のオイル。摩耗防止性、錆止め性、腐食防止性がある |
SD | ― | 1968~71年型のガソリン車に使用できる品質のオイル。SCよりも高い品質 |
SE | ― | 1972~79年型のガソリン車に使用できる品質のオイル。SDよりも高い品質 |
SF | ― | 1980年型以降の車に適応できるオイル。酸化、デポジット、錆、腐食の防止性能がある |
SG | ― | 1989年型以降の車に適応できるオイル。耐摩耗性と防錆効果がある |
SH | GF-1 | 1993年型以降の車に対応できるオイル。SGの性能に加えて、スラッジ防止性、高温洗浄性がある |
SJ | GF-2 | 1996年型以降の車に対応できるオイル。SHよりも、蒸発性、せん断安定性がある |
SL | GF-3 | 2001年度に制定されたオイル。省燃費性の工場、オイル劣化防止性能の向上がある |
SM | GF-4 | 2004年に制定されたオイル。SLよりも浄化性能や耐久性、耐熱性や耐摩耗性がある |
SN | GF-5 | 2010年に制定されたオイル。SMよりも省燃費性能の持続性や触媒保護性能がある |
SP | GF-6 | 2020年に制定されたオイル。SNよりも省燃費性能や清浄性能が強化されている |
JASO規格
JASO規格は、日本自動車技術会(JASO)が制定した規格。日本独自の規格となっており、国産のクリーンディーゼルエンジン用のオイルに使われています。
「DL」や「DH」の後に数字が付いており、高温酸化防止性や燃焼効率を考えて選択するとよいでしょう。
エンジンオイルの粘度
エンジンオイルは、規格で定められた表記方法で表示されており、低温時と高温時の粘度の硬さが判断できるようになっています。
数値で粘度を判断できますが、粘度は省燃費性能やエンジンの保護性能に影響を与えるため、車のコンディションや指定された粘度を選択するのがおすすめです。
エンジンオイルの粘度の見方
低温時の粘度は、数字が低いほど粘度が低くなります。また、高温時の粘度は数字が大きいほど粘度が高くなります。
粘度が低いエンジンオイル
粘度が低いエンジンオイルは、その分エンジンにかかる負担が少ないという特徴があります。負担が少ないということは始動性や燃費がよくなるタイプのオイルです。
しかし高速走行や高温時のエンジンの保護性能がどうしても劣ってしまいます。エンジンの焼き付きに注意が必要です。ハイブリッドカーやエコカーは、低粘度のエンジンオイルが採用されています。
指定された粘度のオイルが低粘度であれば問題ないですが、指定よりも低粘度のものを使う場合には経験のある整備士に相談する必要があるでしょう。
粘度が高いエンジンオイル
粘度が高いエンジンオイルは、エンジンにかかる負担が大きいオイルです。粘度が硬いと、潤滑作用や密封作用が高くなるため、エンジン負荷が高いスポーツカーや経年劣化した車に適しています。
エンジンに負荷がかかる場合もあるため、始動性や燃費に影響がでる場合もあります。エンジンの出力や走行シーン、さらに新車からの年数によっては、高粘度のオイルが適している場合もあるでしょう。
エンジンオイルの選び方
エンジンオイルは多種多様なため、愛車に適したものを選択する必要があります。オイル選びは走行性能にも大きな影響を与えるため、気持ちよく走るためにも適したオイルを選びましょう。
- 指定された粘度
- 車のコンディション
- グレード
これらを考慮しておきながら、車のオイルの粘度を確認しましょう。
指定された粘度を使用する
車には指定されたオイルの粘度があります。自動車メーカーが指定したオイル粘度であれば、エンジンの本来の性能を発揮できるでしょう。
取扱説明書や公式ホームページなどに、車の年式やグレードによって粘度が指定されています。エコカーやスポーツカー、さらには輸入車によって一般的な粘度が異なるので事前に確認しましょう。
車の使用状況を考慮する
車を使うシーンによってオイル粘度を選択できるでしょう。たとえば、高速走行が多いなら粘度が高いオイルの方が高温時でも粘度が保たれます。
街乗りが多いなら低粘度のオイルの方が始動性にも優れているため、適しているといえるでしょう。指定された粘度の他に、使用状況を考慮してオイル粘度を選択できます。
メーカーが指定している粘度から変更することは問題ありませんが、オイル粘度を低くする場合はエンジントラブルの原因となるケースもあるため、経験のある整備士に相談しましょう。
オイルのグレードを考慮する
オイルの粘度は車種によって指定されていますが、オイルのグレードは好みのものを選択できます。既述したように、オイルには規格が定められており、性能を含めたグレードに分けられています。
ベースオイルはもちろんですが、規格の表記があり、オイルの品質や性能を選択可能です。ガソリンエンジン用のオイルやディーゼルエンジン用のオイルに分けられているので、予算や望む品質のオイルを選択しましょう。
車に使われる他のオイルとの違い
車には、エンジンオイルの他にもオイルが使用されています。たとえばブレーキオイルやATフルードなどです。
どのオイルも、潤滑したり洗浄する機能があります。車を動かすのに必要不可欠なオイルになっています。
どのオイルもエンジンオイルほどでなくても、定期的な交換が必要です。走行の仕方や経過年数に応じて、適切なタイミングで交換しましょう。
エンジンオイルに追加する他のオイルには、オイル添加剤も含まれます。エンジンオイルに追加するもので、潤滑作用や密封作用を高めるのに適したものです。
エンジンオイルの添加剤については、こちらの記事をチェックしてください。
オイル交換のタイミング
オイル交換のタイミングは、車や使用状況によって異なります。メーカーによっては、10,000kmや15,000kmで交換となっている場合もあるでしょう。
しかし日本はストップ&ゴーが多い環境ですし、エンジンが温まる前に目的地に着くようなちょい乗りが多いことを考えるとシビアコンディションでの使用となります。
メーカーもシビアコンディションでの使用なら、早めの交換を勧めていることも多いです。弊社カミタケモータースでは、4,000kmもしくは半年に1回のオイル交換をお勧めしています。
オイル交換のタイミングについては、こちらの記事もご覧ください。
よくある質問
- エンジンオイルの種類は?
-
エンジンオイルはベースオイルや粘度によって種類が異なります。車種やグレードによって指定されている粘度が異なっているだけでなく、オイルのグレードも異なるため、好みのものを選択できます。
- エンジンオイルの選び方は?
-
エンジンオイルを選択するには、指定された粘度の他にオイルの規格やベースオイルを見ておくとよいでしょう。コストパフォーマンスが優れた鉱物油、高品質な合成油などが選択できます。
オイル漏れについては、こちらの記事をチェックしてください。